図工の授業で日常的に使われる絵の具セットであるが、どれが正しい指導法であるのか、教師を迷わすような情報が周りにあふれている。たとえば「全ての色をパレットに出し、小部屋の絵の具は洗わない」「パレットは毎回きれいに洗う」「絵の具は3原色の混色で色を作って描いた方が良い」「12色セットより18色や24色セットの絵の具を持たせた方が良い」相反する情報が提供され混乱されている方も多いのではないだろうか。ここでは、なぜそのような相反することが言われるのかを考えながら、水彩絵の具の指導の仕方を考えていきたい。

水彩絵の具の指導方法-低学年での指導と絵の具の色数

【絵の具の指導は何年から?】
貴方の学校では、何年から絵の具セットを持たせているだろうか。教科書では、3年生で絵の具セットの使い方が出てくる。そう、2年生までは、パレットや筆洗バケツといった個人持ちの絵の具セットではなく、絵の具や筆を共同でつかう集団絵の具である。パレットなどは使わず、容器の絵の具を直接筆に付けて塗るといったスタイルが一般的である。もちろん絵の具は塗りやすい状態で用意され、水加減も子どもが行うことはない。

しかし、集団絵の具の管理が面倒だからか、1年生入学の時期に学用品と同時に絵の具セットを揃えてもらう方が手間がかからないといった理由なのか、1年生で絵の具セットを購入するといったところも多いようだ。

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【変な癖がつく】
1年生から絵の具セットを持っても、正しく指導されて、上手に用具が使えるようになれば何の問題もない。しかし、残念ながら誤った混色の仕方や筆洗バケツの使い方を身につけてしまうことが多い。発達段階から中学年が適当と考えられる学習内容を1年で行おうというのだから、よほど緻密な計画と懇切丁寧な指導が必要なはずである。それができないなら教えない方が子どものためではないだろうか?

低学年で教えられて一番困るのがぐるぐる混ぜである。後ほど説明するが、絵の具は混色と言っても「色をぐるぐる混ぜ」てはいけない。色は「出会わせる」のが混色の基本である。正しい混色を教えられないなら、せめて混色しないでほしいものだ。

【3原色は万能か?】
ここで、「絵の具は3原色の混色で色を作って描いた方が良い」 のか「12色セットより18色や24色セットの絵の具を持たせた方が良い」のかの私の考えを述べておきたい。3原色にこだわる人がいる。こういった人は絵の具のチューブから出したそのままの色は使ってはいけないと思っているのかもしれない。3原色と白さえあれば他の色はいらないという人までいる。しかし、身の周りには実にさまざまな色があり、それらを表現するのには3色ではあまりに非力だ。いくら上手に混色しようと作れる色には限界があり、無理に色数を増やそうとすると混色を繰り返して色が濁りやすい。この濁った色を深みのある色と勘違いしてはならない。単純な話だが、絵の具を似た色で1列の輪の形に並べ、隣あった色と混色して新しい色を1色作ったとすると、24色からは、24色の新しい色ができるので、48色の絵の具になるが、同様の方法を3原色でためすと、6色の絵の具にしかならない。48色が使えるか6色しか使えないかといえは、表現の上でどちらが有利かはっきりしているだろう。

【色数が多い方がわかりやすい】
もうひとつ重要なことは、わかりやすさである。使う色が少ない方がわかりやすいといった数のことではないので念のため。たとえば、黄色、緑の2色で考えた時、「黄色」と「緑」を混色すると「黄緑」になる。これは、わかりやすいし、別にメモを取らなくても、いつでも再現できるだろう。この再現できるというのが、学習において重要で、1度できても2度とはできないのなら、役に立たない。使いたい時に使えてこそ役に立つのだし、教育する価値があるというものだろう。さて、この「黄緑」をつくるというのを、3原色を使ってやろうとすると「黄色」と「青」でつくることになるが、これをどのように混色すると「黄緑」になるか教師であっても、即答しにくいのではないか。つまり、色数が多い方が、混色でできる色が推測しやすいという点で「わかりやすい」という訳だ。さらに、色数が多ければ、混色しないで使える色も多く、その点でもわかりやすいといえる。

【では、何色の絵の具が適当か?】
色数が多い方が良いといっても、多ければ多い方が良いという訳でもない。多くなると大きくなるという物理的な相関関係があるからだ。色数が多くても絵の具セットを入れるバッグに入らなければ扱いに困る。小さいラミネートチューブなら24色セットが可能かもしれないが、大きめのポリチューブの絵の具だと18色が限界だろう。ちなみに透明水彩的に描くだけでなく、厚塗りをしたり、工作に使ったりする小学校では、絵の具の量の少ないラミネートチューブより量の多いポリチューブをお勧めする。

【12色セットなら紫を別に用意する】
12色セットすでに子ども達が持っているというような場合、それをそのまま使えばいいが、紫を教師が貸し出せる絵の具として持っておくか、子どもに準備させておくとよい。絵の具の色数は均等に減らされている訳ではなく、減れば減るほど偏りがめだつ。12色の場合は紫が入っておらず、赤と青の間が大きく空いている。これを補ってやれば混色はしやすくなる。

色相環と絵の具
次はいよいよ絵の具の混色について説明しよう。


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