指導に困る子どもの行動

指導に困る子どもの行動 記事

 このページでは、絵の授業の際に、先生方を悩ます子どものある行動について考えてみたいと思います。これらは一部の先生方にとっては、適切な対処が難しいというだけではなく、その子どもの行動が問題ないことなのか、それとも手立てを必要とすることなのか、指導の出発点で迷われることでもあるかもしれません。

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造形的な見方・考え方

 さて、これらを考えていく前に、図工が図工であるために絶対必要な「造形的な見方・考え方」について少し触れておきます。これは図工の目標として指導要領に出てくる言葉です。造形的な見方・考え方とは、感性や想像力を働かせ、対象や事象を形や色などの造形的な視点で捉え、自分のイメージを持ちながら意味や価値を作り出すことです。ここで今回考えていく上でキーワードとなるのは、「感性や想像力」「形、色、イメージ」そして「意味や価値」です。

グロテスクなシーンを描く

 最近では、子どもを対象としたマンガやアニメにも大丈夫だろうかと思う残虐な表現が見られたりします。そのような影響があるのかないのかわかりませんが、人が血を流しているところであったり、死体であったり、残酷なシーンを描く子どもが時々います。

 キーワードのひとつめ、子どもが「感性や想像力」を働かせるのが図工に必要なら、残酷な表現もひとつの感性の表れだと考えられます。そのため、こうした表現をどのように扱うべきなのかは意外に難しい問題です。もちろん、これを無理やり先生の好みのものに描き直させるのは、あまりいい方法ではないでしょう。そうかといって、残酷な表現を認めるのも教育的ではないように思われます。全ての子どもに同じ対応を取ることはできないと思いますが、見る人を意識させてみるというのがひとつの方法だと思います。

 つまり、表現は自分だけでなくそれを見る周りの人のことも考えたものである必要性をその子に話してみるのです。その表現を見た人は幸せな気分になれるのか、見て良かったと感じて貰えるのか、そう問うことで、自分の表現を振り返ることができるのではないでしょうか。 表現の自由だからといって、人を傷つける言葉を言ってはいけないのと同じで、どんな表現も肯定されていいとは思えません。

 図工の目標は豊かな情操を育むことです。その表現を周りの人が見たとき、豊かな気持ちになる、もしくは、少なくとも嫌な気持ちにならないことが必要ではないでしょうか。そういったことを、そのような表現をした時だけに限らず、折に触れ伝えておくことで、残酷な表現は少なくなるのではないかと思います。

キャラクターを描く

 一般的には、なぜキャラクターを描いてはいけないのか、その理由を著作権と絡めて説明されることが多いように思います。しかし、実際には学校における例外措置などがあり、授業の中で先生や児童生徒が著作物を著作者の許諾を得ることなく一定の範囲で利用することができます。図工でキャラクターを描くことも、よほどのことがない限り、この範囲の中に入ってくると思います。

 最近ではキャラクターを登場させて原作とは異なるマンガを制作したり、音楽をアレンジして原曲の雰囲気を残した新しい曲を発表したりするなどの、二次創作が人気です。この二次創作、著作権的にはグレーゾーンですが、二次創作が多ければそれだけ多くの人の目に留まり、人気も高まることから、実際には黙認されていることも多いようです。それどころか、公式に二次創作を許可されている作品も存在します。このように二次創作物に溢れた今の状況で、著作権を理由にキャラクターを描かないように指導するのは、実情に合わなくなってきているのかもしれません。もちろん、著作権は大切な権利で、それを軽く扱うことは慎むべきです。

 ただ図工でキャラクターを描かない理由として、著作権を挙げるより、最初に触れた「造形的な見方・考え方」の「意味や価値」というキーワードの方が私はしっくりくるように思います。

 図工の時間は、子ども達に自分なりの新しい意味や価値を作り出す時間にしてほしいと思います。それは、キャラクターのような、人の考えたものを使うのではなく、何か別の新しいものを自分で創造する方が有意義だと考えます。ただ、キャラクターに着想を得たとしても、別のキャラクターになっていればそれは例外で、否定することはできません。そもそも、何かに着想を得ることなしに、新しいものを生み出すことはかなり難しいでしょう。つまり、ここで好ましくないというのは、似てる似てないは別にして、キャラクターをそのまま描こうとする行為に限った話になります。

文字を書く

 マンガではおなじみの絵の中の文字ですが、図工美術でも絵と文字は相いれないものではありません。それどころか、ポスターであったり、絵手紙であったり、文字を入れる前提の題材もあります。文字をデザインする、絵文字の題材もあります。文字を入れることが問題になるのは、このような文字の活きる題材の時ではなく、補足的に絵とのバランスを無視した形で入れられる説明文のようなものでしょう。

 さて、文字を入れることで懸念される最も大きなことは、文字で説明することが許されるなら、どのように絵で表すかを考え工夫しなくても良くなってしまうことです。適当に描いても、これはマルマルとか横に文字を書けば済んでしまいます。つきつめれば、絵は必要なくなってしまうか、あっても挿絵のような文の補足的な役割になってしまいます。

 そこでキーワード、「形、色、イメージ」の出番です。自分の持つイメージを形や色で表現するのが図工で、図工の時間は形や色で表現しようと活動する必要があります。もちろん、言語活動を含める場合もありますが、あくまで主となるのは、形や色での表現です。

 文字を書いていて、それが学習のめあてから外れる場合は、その子どもに形や色で表現できないか考えさせる必要があると思います。

 ところで、子どもは絵で表現しきれない部分を言葉で補おうとしている訳ですから、その必要性を下げるのもひとつの方法です。例えは、絵を描いて終わりではなく、普段から作品カードのようなもので、描いたものを自分の言葉で説明するようにしておくというのはどうでしょう。自分の描いたものが人に伝わりにくいと思っていても、あとから補足できるとわかっていれば安心して表現できると思います。

まとめ

 このページでは、指導に困る子どもの行動として、「グロテスクなシーンを描く」「キャラクターを描く」「文字を書く」の3つを取り上げて解説してきました。それでは、まとめです。

子どもの行動に対して指導に困ったら学習指導要領の「造形的な見方・考え方」を基に考えてみましょう。その際キーワードとなるのは、「感性や想像力」「形、色、イメージ」「意味や価値」です。

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