授業改善のポイントはココ!「図工の常識を疑え」

図工の常識を疑え 記事

「大きく描く」「よく見て描く」「鉛筆で下書きをする」など、図工で絵を描くときこのようなことを指導されることはないでしょうか。中心となるものを大きく描くのは、表したいものを目立つように描くためにも重要なことだと考えがちですが、もしかしたらこの常識のような考えが、子どもから表現の自由を奪っていることになるのかもしれません。このページでは、このような通常当たり前に行われるような指導を取り上げて、本当にその方法で良いのかどうかを考えていきたいと思います。

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大きく描く

 表したいものを目立つように描くことは重要です。しかし、ひとりぼっちで寂しい感じを表現するのに、対象を大きく描いては、その感じを表現することは難しくなってしまいます。小さな昆虫、たとえばテントウムシを画用紙いっぱいに描いてしまったら、その小ささや可愛らしさが表現しにくくなることはないのでしょうか。

図工の常識を疑え

 表したいものを大きく描くかそうでないかは、指導者が決めるのではなく、子どもが自分のイメージに合う表し方を考え、その中で決めるものです。中心になるものが小さければ、周りの工夫余地が大きいということになります。また、小さいものを複数描くことで、画面を構成することもできます。このように、大きく描くことを無理強いするのではなく、それぞれの子どもに寄り添うような方法を見つけていくことが必要ではないでしょうか。

よく見て描く

 表したいものが自分だけではなく、人にも伝わるためには、対象の形や色の特徴を捉えてそれを紙の上に表現しなければなりません。 そこで、対象の形や色の特徴を捉えるために、よく観察して描くように指導されることがあります。

 そのための授業として、靴やランドセルなどの身近なものをモデルに絵を描くようなこともあるかもしれません。しかし、こういった題材の一番の問題点は、それが子ども達の描きたかったものだったのかという点です。描くものを先生が指定して、写実的な表現を求めてしまうと、そこに子どもの思いは入らなくなるような気がします。よく見て描くにしても、その対象を子ども達が自由に選ぶこともできるはずです。

図工の常識を疑え

 ところで、学習指導要領には、よく見て描くという内容はありません。「表したいことに合わせて表し方を工夫して表すこと」が求められています。表し方の工夫として、写実的に表すこともあるかもしれませんが、あくまで子ども達の工夫の中でのことです。よく見て描くことを指導される場合は、単に写実的に表すことが目的となってしまわないように、題材を考えていく必要があると思います。

鉛筆で下書きをする

 画用紙に絵を描く時、鉛筆で下描きをしてから、マーカーで線をなぞったり、色を塗ったりされることはありませんか。しかし、鉛筆は、文字のような小さなものを描くのに適した用具です。これを使って大きな画用紙に描こうとするとバランスの悪い組み合わせになってしまいます。そのため、絵の具で塗るには不向きな小さく細かい絵になりがちです。

 そこで、いきなりマーカーで線を描いたり、筆で塗りながら形を作ったりする方法はどうでしょう。下描きをしないことで生き生きとした線が描けたり、失敗できないことで、一本一本の線を大切に描いたりするメリットもあります。もし、鉛筆の下描きをよく行われているのであれば、一度下描きをせずに描いてみるのもいいのではないでしょうか。

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やり直しを避ける

 思うように描けなかった時、やり直したいと子ども達が申し出てくることがあります。しかし、先生方の中には、このやり直しに対して、否定的な方もいらっしゃるかもしれません。途中で投げ出すような感じがするとか、用紙が無駄になるとか、他の子との間に公平性をかくとかいった理由でしょうか。

 ただ、図工は試す教科です。試していれば、当然、これはダメだなと結論が出ることもあります。その場合は、ダメな方にしがみつくのではなく、別のやり方を試みるのが常道でしょう。本人がその方法をダメだと判断して、別の方法に変えたくなったのだとしたら、それを応援するのも悪いことではありません。もちろん、こだわりが強すぎてちょっと思い通りにならないとやり直したいという場合は、また違った指導が必要です。

背景から塗る

 絵の具で彩色する時に、先に背景から塗るように指示されることはないでしょうか。描いたものに関係なく、画用紙全体に色を塗っておくのはとても効率の良い方法です。全体に色を塗っておけば、塗り忘れは防げますし、前景が複雑なものの場合でも、隙間を塗る手間が省けます。

図工の常識を疑え

 しかし、絵の描き方としては、描きたいものや中心になるものから描いていくのが自然でしょうし、背景はそれらに合わせて描いていく方が、楽しい背景になりそうです。もちろん背景から塗る子もいていいと思いますが、塗る順番を含めて子ども達に考えさせることでより資質能力が伸ばせるのではないでしょうか。


 

 いかがでしょうか。当たり前だと考えてきたことの中にも、実は改善の余地があるのかもしれません。ただ、これらのことが常に良くないことだという訳ではありません。大きく描くように指導する方が良い場合もあるでしょうし、やり直すことは禁止して最後までやり通す指導が必要になる場合もあるでしょう。

 しかし、これまで行ってこられたことを疑いなく続けるのではなく、本当に別の方法はないのかと考えてみることは大切なことだと思います。そうして、その中で授業の見直しポイントがないか考えていただければ嬉しいです。

動画で解説

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