本当は高い評価をすべきではないのに高く評価してしまいしがちな作品というのがあります。また、その逆の作品もあります。このように、評価の際に教師が惑わされがちな作品を取り上げ、惑わされがちな理由と対処法を解説しています。
注)評価は作品だけで行う訳ではなく、子ども達の活動の様子を評価していきますが、ここではわかりやすさを優先して、作品を制作していく活動の様子を含めて「作品」という言い方にしています。
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先生が惑わされがちな3つの作品
シンプルな作品
シンプルな作品って、かっこいいですね。無駄なものがないだけに、美しさが際立ちます。ただ、子ども達の作品に限ってはどうでしょう。意図的にシンプルさを追求するというよりは、シンプルにならざるを得なかった場合が多いように思います。
例えば、最初の形や色、イメージから発想を広げることができなかったり、全体的なことを見通すことができずに途中で活動を続けられなくなったりということが原因ではないでしょうか。
本来、シンプルさの追求は無駄を削っていく作業でもあります。無駄な要素を見極め、それを別の単純な形や色に置き換えたり、思い切って無くしてしまったりという高度な思考が必要です。子ども達がそうした考えの元でシンプルさを追求した結果なら高い評価を付けてあげればいいと思いますが、単に思いつかなかったからシンプルにした場合、スッキリとしているとかかっこいいとかいうことで高い評価にするのは違うのではないでしょうか。
シンプルな作品はきれいに見えることも多く、意外と大人が惑わされがちだと思います。
勢いのある作品
材料をたくさん使うと当然大きなものができます。見ようによっては、勢いがあるとか伸び伸びしているとかと捉えることもできるでしょう。
しかし、この学習のめあてが素材の形を工夫して立体的な形を作っていくというものであった場合はどうでしょう。大きな作品にしたことが、形を工夫したことにはなりませんよね。ここで評価するのは、形を工夫しているかどうかです。
つまり、勢いというのは、学習のめあてとして設定していない限り、良くも悪くもない中立的なものです。勢いに限らず、学習のめあてにない中立的なものに引っ張られて、評価を高くしたり低くしたりすることのないように気をつけたいものです。
上手な作品
図工の事をよく勉強されている先生の中には、子どもの絵を上手下手で評価しないのがいいと考え過ぎて、上手な子の評価を低くされてしまうことがあります。
上手下手で評価しないのは、間違いではありません。なぜなら、図工という教科の目標が上手に作ることに置かれていないからです。では、なにが求められているのかというと、創造的に発想したり作ったりする資質能力です。
しかしだからといって、上手な作品をことさら避けて、上手でない作品を高く評価するというのは違います。上手にできるということは、資質能力が高いということです。それが工夫して技能を使っていたり、創造的に発想されたものであった場合、正当に評価してあげて頂きたいと思います。
正しく評価するために
上記の作品に惑わされず正しく評価するためには、評価するものを間違えないことです。シンプルだからとか勢いがあるとか、上手いとかではなく、「学習のめあてがどれだけ達成できたか」を評価しましょう。
授業を行う前に、その授業の目標を設定します。この題材では、こんな資質能力を伸ばしていこうとかいう感じです。そして、評価は、それが達成できているかいないかで行うということです。
常に学習のめあてで評価していくという意識でいることで、作品に惑わされることも少なくなるのではないでしょうか。
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