思いのままに描いた線の中に彫刻刀で模様を彫っていきます。人物画では顔を白くしようと広い面積を彫り取ってしまいますが、この題材は彫り取るだけではなく、彫り跡の間隔や形、繰り返し方などを工夫しながら進めていくことができます。また、模様の大小や部屋の数で時間のかかり方を変えることができますから、進度の違いを調整することも容易です。
線の中に模様を見つけての題材概要
【用具材料】
彫刻刀、カラーべニア八つ切り版木(360mm×260mm×4mm)、八つ切り彩色和紙(380mm×273mm-1人3枚)、版画作業版、見当紙、バレン、練り板、ローラー、養生シート、新聞紙、インキ(黒)、絵の具
【制作手順-9時間】
1.紙に試し描きをしたあと、マーカーで版木に線を描く(1時間)
2.線の内側に模様を彫る(3時間)
3.線の外側と背景を彫る(1時間)
4.刷る(2時間)
5.裏から絵の具で彩色する(2時間)
【めあて】
彫刻刀を使い分けながら、線の中の模様を工夫して木版に表す。
【評価】
安全に気を付けながら、彫る場所や形で彫刻刀を使い分けて模様を工夫することができたか。
線の中に模様を見つけての制作過程
紙と鉛筆で試し描き
下描きせずに、油性マーカーで太く力強い線で描いていく
ゆっくりと線の向きや形を考えながら描く
線の内側を三角刀で線に沿って彫る
三角刀の彫りで囲まれた部屋の中に模様を彫る
ひとつの部屋を彫ったら、次の部屋へ
ひとつの部屋の中を複数の模様で彫っても良い
部屋を分ける線や形をマーカーで付け足しても良い
小さな部屋や消したい線は、その線を無視するだけでOK
彫っているうちにいろいろな模様を発見する
印刀と他の刀を組み合わせた模様
彫る場所や彫りたい模様に合わせて
彫刻刀を使い分ける
内側が彫れたら線の外側を線に沿って三角刀で彫る
形の周りも工夫しながら彫っていく
版が完成した
板にインキを付けて
バレンでこすって刷り取る
きれに刷れた
必要な枚数が刷れたら板を水洗いする
彩色和紙を使うと裏側から絵の具で色を付け加えることができる
少し水の量を多めにして絵の具を使う
表から見たところ
完成作品
完成作品色なし
完成作品
完成作品色なし
完成作品
完成作品色なし
完成作品
完成作品色なし
完成作品
完成作品色なし
線の中に模様を見つけての詳細
・下描き無しで描いた線の中に模様を彫っていく木版画の題材である。初めて彫刻刀を使う作品として取り組んでも楽しく学習できる。ただし、各彫刻刀の基本的な使い方は、版木の裏を使うなどしてあらかじめ指導しておく必要がある。
・紙に試し描きはするが、それにこだわらなくても良い。なるべく一筆書きの要領で線を続けるようにして描くことで、細切れの線ができる事を防ぐことができる。マーカーをゆっくり動かすことで、太く力強い線を描けると同時にどのような形にするか考えながら描くことができる。
・マーカーの線でできた部屋をひとつ選び、マーカーの線の内側(青い部分)を三角刀で彫っていく。部屋の内側をぐるりと一周する形になるので、彫る場合は板が360度回転する必要がある。板を回しながら彫ることをここで押さえておきたい。
・結果的にすべての部屋を彫ることになるかもしれないが、いくつもの部屋をまとめて三角刀で彫るのではなく、ひとつの部屋を三角刀で彫ったら、その部屋に模様を彫り、それができてから次の部屋を彫るようにする。
・部屋が大き過ぎた場合、マーカーで部屋を分ける線を描けばよい。また、部屋が少なかったり、形を付け加えたくなった場合も新たに描き加えることができる。逆に部屋が小さ過ぎた場合、部屋を区切る線を無視して模様を彫るとよい。
・インキを付ける場所を別に用意して、刷りのみを自分の机で行うようにすると効率的である。インキの付いた板を持ち運ぶ必要はあるが、自分の机の上だけで刷れるので、隣の子が彫っていても刷りを行うことができる。彫り終わって刷りに入る前に、自分の机の上を整理して、新聞や刷り紙などを用意してからインキを付けるように指導する。
・マーカーで描いた線は消すことができる。見えていても、彫らない限り刷った時に出てこないので、線を無視することで消すのと同じことができるからである。このことを使って、彫りの遅い子は、いくつかの部屋を彫らないことで、時短を図ることができ、進度をある程度揃えることができる。線の横を三角刀で彫る時、いくつもの部屋をまとめて彫らないのも、同じ理由である。
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