小学校図画工作の教科書をみてみると造形遊びの題材がたくさん取り上げられています。しかしながら、造形遊びのことが今一つわからないという方も少なからずいらっしゃるようです。そこで、造形遊びをテーマに基本的なことから実践的なことまで詳しく取り上げたいと思います。このページではその1回目として、教科書の扱いから、絵や立体、工作に表す活動との違い、造形遊びを学習する意味について解説しました。
造形遊びの基礎を動画で解説
このページの内容を具体例を挙げながら動画で詳しく解説しています。10分程度の動画になっていますので、ぜひご覧ください。
造形遊びの位置づけ
造形遊びという言葉が指導要領に出てくるのは、平成元年1989年のことです。しかも、昭和52年1977年に改訂された指導要領には造形遊びという言葉ではないですが、すでに、造形的なあそびをすることと記述されています。
また教科書の題材数を他の活動と比較してみると下の表のようになっています。題材の個数だけの比較なので、時間数などは考慮していませんが、それにしても、造形遊びって意外に多い印象ではないでしょうか。
造形遊びと絵や立体、工作に表す活動との共通点と相違点
まずは共通点です。造形遊びも絵や立体や工作に表す活動もどちらも表現活動です。ですので、子ども達に身に付けさせたい資質能力は同じです。創造的に作ったり表したり、発想したりする力を育成します。
次に相違点ですが、それは目標を達成するための手段が違います。造形遊びはその名の通り遊びを通して資質能力を身に付けようとするのに対して、絵や立体、工作に表す活動は作品作りを通して身に付けようとします。前者の場合は、遊んだ結果として作品のようなものができることもありますが、ほとんどは使ったものを片付けて形に残らないことが多いでしょう。
もう少し詳しく説明すると、絵や立体、工作では、あらかじめどんなものを作るかが決まっています。ゴールが決まっているといってもいいでしょう。一方、造形遊びは、どんなことができるかを子ども達が考えて活動します。扱う素材は同じでも、子ども個人の興味によって行う活動が変わってきます。
なぜ造形遊びを学習する必要があるのか
育てる資質能力が同じなら、絵や工作だけでもいいのではないかと疑問に感じられている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
教科書で1.2年生の造形遊びの題材をご覧になったことはあるでしょうか。砂遊びだったり色水遊びだったりします。これと似たようなことは、小学校に入学する前から、家庭や保育所、幼稚園などでもしていますよね。 それもそのはず、造形あそびとは、誰もが自然と行っていること、または行ってきたことと同じような活動です。このように造形遊びは、未就学児の段階から自然とみられる最も基本的な活動の延長線上にあるものです。
ここでちょっと目先を変えて、大人の場合も考えておきましょう。大人は造形的な能力をどういった場面で発揮しているでしょうか。それは、今日着ていく服装を決める時であったり、模様替えでカーテンを選ぶ時であったりします。何かを買う時にも、機能以外にデザインも重視したりしませんか。リビングの棚に小物を並べる時、本棚を整理するときにも造形遊びに通じる能力が発揮されているのかもしれません。人は大きくなって、絵を描いたり、工作をしたりすることがなくなったとしても、日常生活の中で造形的な力を常に使っています。そしてこの力は造形遊びで養われる力にとても近いものです。
確かに絵を描いたり、立体や工作を作ったりすることは、造形的な資質能力を伸ばすのに大切なことです。しかし、造形あそびでは、よりリアルな身の回りの空間や物に関わりながら造形的な力を伸ばしていけるのではないでしょうか。
以上のように、生活の中の色や形に積極的に関わり、生涯にわたって生きる力となる基礎を養うために、造形遊びを学習する必要があるのだと思います。
まとめ
造形遊びは
・随分前から指導要領に取り上げられ、教科書の題材も多い
・他の活動と育てる資質能力は共通するが、活動を子ども自身が考える点が違う
・生涯にわたって生きる力となる基礎を養うのに最適
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