子どもが思い違いしやすいところに気づいていると指導が的確に行えます。木版画ではその思い違いの代表的なものが、きれいに彫ろうとすることです。このページでは、きれいに彫らないをキーワードに木版画の指導のコツをお伝えします。
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このページの内容をさらに詳しく動画にしています。こちらもぜひご覧ください。ページの都合上、ここで取り上げなかった問題が起こりがちな題材についても解説しています。
木版画の思い違い
試し刷りでわかる子ども思い違い
本番前に試し刷りをされる方は多くはないかもしれませんが、試し刷りで子ども達の思い違いがわかります。ただ、子ども達の思い違いを確認するために試し刷りをする必要はありません。もし、試し刷りをするのなら、本来の目的のために行ってください。
さて、試し刷りをしたあとに、彫り直す時間を設けてみると何が起こるのか。すると多くの子が、印の部分をさらに彫ろうとします。顔が黒くなっているので、少しでもきれいにしておこうとするんですね。
でも、これは良くなるどころか、悪くする典型的な例ですが、それは一体どういうことでしょうか。
なぜインキの付いた部分をさらに彫りとってはいけないのか
顔が黒くなっていた部分というのは、他よりも高くなっていた部分です。この盛り上がった部分が刷り紙を支えていたから、それだけのインキの付き具合で済んでいた訳です。
もし、ここを平らに彫りとってしまえば、支える部分がなくなってインキはべったりと付いてしまい、先ほどより汚くなってしまいます。さらに悪いことにローラーでインキを付ける時にも、平らな方がたくさんインキが板に付いてしまいます。
つまり木版画はきれいに平らにすればするほど、意図しないインキが付きやすくなります。しかし、子ども達は、彫って低くすればインキは付かないと考えます。これが子ども達の思い違いで、木版画はきれいに彫ってはダメだという理由です。
うまく彫るための指導
木版画の仕組みを説明する
子ども達が思い違いから板を平らに彫りとってしまうのを防ぐには、まずシンプルですが、木版画の仕組みを説明することです。彫り跡のデコボコが不要なインキの付着を防いでいることや、刷り紙を支えていることを話しておくといいでしょう。
このように木版画は、白くしたい部分を真っ白にすることはできず、ある程度のインキが刷り紙につくのは仕方のないことです。この彫った部分に付く色を汚れにするか、絵の一部にするかは、彫り方にかかってきます。
ですので、木版画の彫りは彫り跡を活かすつもりで彫ることを意識して制作する必要があります。白くしたいところに立体感や向きを感じられるように、彫る方向や彫り方を考えながら彫り取るようにしましょう。
題材を考える
防ぐ方法のふたつ目は、題材自体を変えるということです。自画像などはどうしても顔を白くしようとして広い面積を彫り取ってしまうことになります。自画像という題材そのものが、彫り取る部分の偏った少し難しい題材だと言えます。
そこで、模様を彫ってみるというのはいかがでしょうか。模様ですので、広い面積を彫り取ることはほとんど起こりません。彫り取ってしまったら模様になりにくいですからね。この模様を彫る題材は別のページで詳しく解説していますので、合わせてご覧下さい。
インキの付け方を工夫する
みっつ目の方法は、防ぐというより、彫り取ってしまった後の対処法になります。彫り跡を活かすように彫りましょうといっていても、一部の子は平らに彫り取ってしまうことがあります。そんな場合は、刷る時のインキの付け方を工夫しましょう。
ローラーは版木の上を均一に転がさなければならないと決まっている訳ではありません。インキを付けたくない部分には、できるだけインキを付けないように扱うこともできます。こうして板にのせるインキを部分的に減らすことで、ベッタリと刷り上がってしまうのを防ぐことができます。
これは彫り進み版画で色分けをしたい時にも、別の色が混ざらないようにする有効な方法です。
以上、木版画で板をきれいに彫ってはダメな理由と対処法についてお話しました。それでは、まとめです。
●子ども達は、思い違いから板を平らにしようとすることが多い
●広い面積が平らになると紙が汚れやすい
●防ぐには仕組みを説明したり広い面積を彫り取らない題材を選ぶと良い
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