マスキングテープといえば、塗装の際に意図しない部分に塗料が付くのを防ぐ養生用テープでしたが、最近ではかわいい柄やおしゃれな色のものがたくさん販売されています。カラフルなマスキングテープを使っていろいろ楽しい活動ができそうですが、このページではカラフルではない、塗装養生用のマスキングテープを使った図工の技法を解説したいと思います。題して「絵の具と使うマスキングテープ」です。
マスキングテープを絵の具のマスキングに使う
取り上げるのは、マスキングテープを絵の具のマスキングに使うという、マスキングテープの本来の使い方に近いものです。ここでは、2つの技法を紹介します。ひとつ目はマスキングテープを絵の具の境目をはっきりと描くために使うものともうひとつはマスキングテープでステンシルローラー版画を行うものです。
マスキングテープの技法を動画で解説
絵の具のマスキングに使う技法を動画で分かりやすく解説しています。合わせてご覧いただけると、このページの内容が理解しやすいかと思います。
マスキングテープを使う時に気を付けること
今回のマスキングテープの使い方はどちらも画用紙に貼って絵の具が付くのを防ぐものです。この時、一番問題になるのが、マスキングテープの粘着力です。使うのが、イラストボードやキャンバスなら粘着力はそれ程気にしなくてもいいのですが、画用紙に使うとなるとここは細心の注意を払う部分になります。なぜなら、マスキングテープをはがそうとするときに、画用紙が破れてしまうからです。
元々マスキングテープは、塗装のための養生用や仮止め用なので、はがすことを前提に作られた製品です。そのため、粘着力はもともとそれ程強い訳ではありません。しかし、使う場所や貼られる素材によって粘着力を変える必要があり、どれを購入しても同じという訳ではありません。
そこで、弱粘タイプか超弱粘タイプを選んでほしいと思います。ただ、弱粘のものであっても、画用紙に使うと粘着力が強すぎるということはよくあります。そこで実際に授業で使用する前には、必ず一度試して頂きたいと思います。特に絵の具を使って紙が湿っていると、破れやすくなりますので要注意です。
私は、マスキングテープの接着力を弱めるために、あえて粘着面を汚しています。一番簡単な方法は、服に付けたりはがしたりすることです。セーターなど繊維がけば立っているものが適していますが、粘着面が汚れればいいのでズボンでもタオルでも机でも代用できます。
ところでわたしは建築用とか塗装用とかのマスキングテープではなく、美術用として販売されているものがないか探してみたことがあります。もしかしたらそういった製品も存在するのかもしれませんが、私が探した範囲では見つけることができませんでした。唯一、美術関係の消耗品カタログに弱粘性マスキングテープの掲載を見つけたぐらいです。こちらは、実際に購入までしましたが、ホームセンターの建築塗装関係で販売されているものと同じものでした。
マスキングテープを塗り分けに使う
マスキングテープのひとつ目の使い方として、塗り分けに使う方法を紹介します。これは、色を付けたくない部分を養生するのと同じ考え方です。直線で切り分けられた部屋を塗り分けるのに、マスキングテープは活躍します。
動画の中ではマスキングテープを縦横斜めに貼って、絵の具を塗る部屋が自然とできあがるような使い方をしています。これ以外に全体に色を塗った後、描きたい図形をマスキングテープで作り、その中を塗るというような使い方もできます。
マスキングテープでステンシルローラー版画
シールを画用紙に貼っておいて、その上からローラー転がしで色を付けると、シールで隠れていた部分は前の紙の色になります。このような技法をステンシルローラー版画といいます。これと似たことをマスキングテープで行うことができます。
白い画用紙にマスキングテープを貼るか、色を付けた画用紙にマスキングテープを貼るかで、最後に出てくる色が変わります。ローラーで色を付ける回数を少なくする場合は、白い色画用紙に直接マスキングテープを貼るといいでしょう。全員が白を含むのを避ける場合は、色画用紙を使うのもいいと思います。
動画では4色を重ねましたが、絵の具が乾かないとマスキングテープを貼れないことを考えると、塗らない状態でマスキングテープを貼って、ローラーで2色重ねるのもいいと思います。
ところで、ローラーを使う際に、絵の具と同量の不易糊を使っています。これは、絵の具がさらさらしているとローラーが空回りして塗りにくいので使っています。なくてもできますが、おまじないのようなものだと思ってください。
マスキングテープをはがす
マスキングテープは乱暴にはがすと画用紙を傷つけてしまいます。画用紙はなるべく乾いた状態ではがす方がいいでしょう。(子ども達は乾くのを待てない場合も多いのでその場合は自己責任ではがさせていました(笑))
マスキングテープは上に引っ張るのではなく、折り返すようにマスキングテープ自体が背中合わせになるように引っ張った方がうまくはがれます。また、はがす順番も大切で、後から貼ったテープからはがすようにします。よく見るとどれが上になっているかわかります。間違えたら、いったんはがし始めていたテープを戻し、正しいテープをはがすのが良いでしょう。
マスキングテープを絵の具の作品に活かす
マスキングテープの技法を2つ紹介してきましたが、実際に絵の具の題材にどのように活かせばいいのでしょうか。
動画を見て頂いた方はすでにお気づきだと思いますが、マスキングテープでは直線で構成された作品しかできません。(無理やりシワを入れながら曲線を作ることはできますが、、、)どうしても、同じようなものが出来上がるのは仕方のないことです。
そのため、体験としてマスキングテープを使って動画で紹介したようなことを試してみる時間はあっていいのですが、これを単体で作品にするのは少し難しいでしょう。そこで、マスキングテープを使って塗った紙を使って何かを表現するとか、工作の材料に使うとか、題材の中で使われる技法のひとつとしてとらえ、何かと組み合わせて考えるのがいいのではないでしょうか。
一度マスキングテープを使って色を塗った経験のある子は、自分から塗り分ける時にマスキングテープを使いたいと言ってくるかもしれません。刷毛とかブラシとかと同様にマスキングテープも表現したい時に使っていい用具に入れておくと、表現の幅が広がります。
ぜひ、マスキングテープを図工で使う用具の仲間に加えてみてください。
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