用具の安全な使い方-絶対ケガをしない彫刻刀の指導を考える

彫刻刀を安全に使う 動画

 図工では、小学校の中学年で新しく使うことになっている用具として彫刻刀が挙げられています。彫刻刀は主に4年生で、木版画の版を作る際に利用されます。刃物は、低学年で扱うハサミやカッターナイフ、中学年で扱うのこぎりなどがありますが、これらの刃物が切る時に使用されるのに対して、彫刻刀は彫る用具です。彫刻刀を扱うことで物の加工の幅を広げることができます。

 しかし、一方で使い方によってはケガのリスクも大きい用具なので、安全に扱うための指導は欠かせません。この時、手を切らないように気を付けるように言うだけでは、不十分でしょう。安全な持ち方、彫り方を丁寧に教えた上で、さらに手を切らないように気を付けなければなりません。

 ここでは、絶対ケガをしない彫刻刀の指導とはどういうものかを持ち方、彫り方、用具の管理の3つのポイントから考えていきたいと思います。

ケガをしない彫刻刀の指導の説明動画

 絶対ケガをしない彫刻刀の指導について動画で解説しています。動画の中で、彫刻刀の正しい持ち方についても詳しく説明していますので、文章や写真だけでは伝わりにくい部分も理解していただきやすいと思います。

絶対ケガをしない彫刻刀の指導はコレ-安全に技能を身に付ける3つのポイント

彫刻刀の持ち方をしっかり教える

 ハサミでも、カッターナイフでも、のこぎりでもそうですが、ケガをするのは、刃物を持っていない方の手です。そのため、刃物を持っていない手をどこに置くかがとても重要になります。

 木版画で板を彫る場合は、彫刻刀を両手で支えるようにするのが一番いいでしょう。詳しくは上記の動画を見て頂くとして、そもそも両方の手で彫刻刀を持っているのですから、ケガをする「刃物を持っていない手」は存在しません。ですので、この持ち方で彫っている限り絶対にケガはしません。

 まれにケガの防止の為に軍手をはめて木版画を行っている場合もあるようですが、このようにすると彫刻刀に手を添えることができずに、正しい持ち方が身に付きません。例え軍手の上からでも、深く刺してしまうと大きなケガをしてしまいますので、正しい持ち方が身に付くようにする方が安全です。

 注)正しい持ち方とは木版画を彫る時に小学生にとって最適と思われる持ち方です。木彫りで立体に表したり、大人が彫ったりする場合には、違ってくることがあります。

板を回しながら前に彫る

 正しい持ち方を維持するためには、彫刻刀を前に押し出すようにして彫る必要があります。そして、そのためには、これから彫りたい部分が前にあるように、板を傾けたり回したりすることになります。このようにして彫っていると、板が右に左に傾いたり一回転したりして、忙しく動きます。

 逆に板が動かない子は注意が必要です。彫刻刀を前に押し出さず、横向きに彫ったり、自分の方に刃先を向けていたりします。こうした場合、彫刻刀に添えていた手は離れてしまい、刃の前に置かれていたりしますので、大変危険です。

 先生は、板の動きに注目して、無理な向きに彫ろうとしている子を見つけ個別に指導してあげてください。

学校保管の彫刻刀の危険性

 刃物はどんなものでも使えば切れ味が落ちてきます。刃物の中でも特に共同で大人数で使うことになるものは要注意です。彫刻刀を個人では用意させず、学校で管理しているものを使っているような場合がそれに当たります。

 学校の共同彫刻刀は、クラス数にもよりますが、1、2年ごとに研ぎ直しをしたり、数年に一度買い替えたりする必要に迫られるはずです。しかし、研ぎ直しをメーカーなどに依頼するにも買い替えるにも定期的に費用がかかります。果たして、こういった費用は正しく予算に計上されてメンテナンスが行われているでしょうか。一度共同の彫刻刀を購入したらメンテナンスもされずに使い続けられてはいないでしょうか。

 刃の悪い彫刻刀を使うと無理な力で彫ることになり、結果的に大きなケガにつながります。ですので、メンテナンスに自信のある学校以外は「共同の彫刻刀を使わない」ようにされることを強くお勧めします。

版画の彫りと立体の彫り

 ここまで、木版画で彫刻刀を使う場合に絞って、お話をしてきました。しかし、彫刻刀を使うのは、版画用のべニア板を彫る場合だけではありません。教科書には、粘土の塊を彫ったり、石鹸を彫ったりする題材も取り上げられています。

 これらの題材で要求される彫刻刀の技能は、木版画で要求される技能とは大きく異なっていることを念頭に置いて、取り組まなければなりません。どちらがケガをする危険性が高いかというと、圧倒的に立体的なものを彫る場合です。

 この違いがどこからくるのかというと、彫るものを安定させることが難しいことに尽きます。板ならば裏面は平らで広いのでそれほど苦労せずに固定できますが、立体的な形は不安定になりがちです。大きな万力などで固定できる場合は別ですが、そうでない場合は、彫刻刀を持たない手で押さえるしか方法がなくなります。さらに、彫刻刀の後ろで押さえるより、前から押さえる方がしっかりと固定できます。つまり、彫刻刀の前に手が来ることがどうしても多くなります。

 以上のように、立体的なものを彫る場合は、絶対にケガをしない正しい持ち方ができないことが多く、最後まで安全に活動するには十分な彫刻刀の経験があってはじめてできることだと思います。彫刻刀で立体的なものを彫ろういう場合には、十分注意して取り組んでください。

 ここまで用具の安全な使い方として、絶対ケガをしない彫刻刀の指導を考えてきました。刃物はケガをする危険性がない訳ではありませんが、それだからといってなるべく扱わないようにするのは、逆に危険な気がします。彫刻刀を使う機会をなるべく多く持って、扱いに慣れることが安全に使う唯一の方法だと考えるのですが、いかがでしょうか。

それではまとめです。

両手で使う、押し出して使う(板を回す)ことが安全に使うポイント

メンテナンスができないのに共同彫刻刀は使わない

立体的なものを彫る場合はケガをする危険性が跳ね上がる

 

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