今更聞けない木版画の疑問をズバッと解決!

木版画の疑問 記事

 彫刻刀や木版画指導に関しては、絵の具などと違って頻繁に行う学習ではないので、専科の先生は慣れていらしても、担任の先生にはわからないことも多いかもしれません。そして、そのわからないことの中には、技術指導や安全指導以前の素朴な疑問のようなものもあるのではないでしょうか。こういった疑問は、意外と答えを見つけにくいのかもしれません。そこでこのページでは、知っているようで知らない木版画に関する5つの疑問をにお答えしていこうと思います。

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1、何のために木版画を学習するのか

 1つの版で同じ絵が何枚かできるとはいえ、コピー機やプリンタのある今の時代に、木版画を学習する必要性を疑問視される気持ちはよくわかります。

 ただ、図工の木版画題材は複写だけを目的としたものではありません。彫刻刀を使って板を彫っていく経験や、版を刷り取っていく行為は、紙に直接絵を描くのとはまた違った造形経験になります。刃物の扱いに慣れたり、表すものに合わせて刀を選んだり、彫りを工夫したり、インキの量を加減したり、力を込めてバレンでこすったり、実に様々な木版画でないと経験できないことがたくさんあります。

 私は、より豊かな造形経験をするためのひとつの方法として木版画を学習するのだと考えていますが、みなさんはどう思われるでしょうか。

木版画の疑問

2、線の表現は白がいいか、黒がいいか

 木版画では彫刻刀で彫ったところが紙の色になります。そこで、白い紙に黒インキで刷る場合、線を黒くするためには、線以外の部分を彫る必要があります。これは、彫刻刀に慣れないうちはとても難しいことですし、鉛筆のような線だとそもそも不可能なので、線をマーカーや筆などでかなり太くしてから彫り始めることになります。

 これらは、すべて線を黒く表現しようとするから起こることで、線が白くなってもいいのであれば全く気にしなくていいことです。線を白にする場合、下絵を描いてから彫る時に、下絵の線通りに彫っていくことができます。ですので、彫刻刀の入門期には、線を白く表現する方法をおすすめします。

木版画の疑問

 ちなみに、人物画の場合は線を白く表現する方法では、顔が黒くなってしまって違和感があります。線を黒くするしかない人物画は、入門期向けではないことを知って頂き、別の題材を検討して頂くことをお勧めします。

3、彫刻刀は全種類教えるべきなのか

 彫刻刀セットには、通常三角刀、丸刀2本、平刀、印刀(切り出し刀)の4種類5本の彫刻刀が入っています。もちろんこれら全てを教える方がいいですが、三角刀と丸刀だけでもOKです。この2種類の刀があれば、大体の部分を彫ることが可能です。

木版画の疑問

 平刀は、三角刀や丸刀と同じような使い方をするのにも関わらず、扱いが少し難しくなります。それは、平らで刃表と刃裏を間違いやすいこと以外に、彫りが木目に影響されやすいことがあります。一方、印刀は持ち方から彫り方まで、他の刀とはまったく違います。このように、平刀と印刀は少し指導する内容が多くなるので、指導経験の少ない方は、無理をせず、まずは三角刀と丸刀を指導して、余裕があれば平刀を指導し、さらに余裕があれば印刀を指導するという方法でいいと思います。

4、版画インキの代わりに絵の具はつかえるか

 多忙な先生方にとって用具や材料を揃えるのは、本当に大変だと思います。もし手持ちの材料や用具が使えるならそれに越したことはありません。

 では、版画インキの代わりに子ども達が持っている絵の具を使うことはできるのでしょうか。たしかに、一版多色刷りのように版に少しずつ絵の具を塗って、部分的に刷り取っていく版画に絵の具が使われることは多いです。ただこの時、一番苦労するのが、絵の具の乾燥です。版木に塗ってすぐに刷り取らないと絵の具が乾いてしまってうまく写らないのです。かといって水を多くすると絵の具が流れたり、色が薄まったりしてきれいに刷れません。版木の一部ですらそうなのですから、板全体に絵の具を使うのは難しいのがわかるでしょう。その点、版画インキは絵の具に比べて乾きにくくなっていて、また板に塗り広げやすい粘り気も考えられています。

 そもそも、絵の具を使うことに対する費用的なメリットは全くありませんので、版画インキを購入されることを強くお勧めします。

5、樹脂板やMDF板の使用はOKか

 最近では、MDF板のような集成板の版木や樹脂系の版木が教材メーカーから購入可能です。木目がなく均一で彫りやすいというのがアピールポイントです。確かに節や木目がなくどこでも軽い力で彫ることができます。

 しかし、手から伝わる感覚や削られたときの音などが、木とはどうしても異なります。もしかしたら、単なる好き好きなのかもしれませんが、折角彫刻刀で木版画を学習するのですから、木を彫る感触を十分味合わせてあげたいと思うのは私だけでしょうか。ということで、MDF板や樹脂系の版木はNGという訳ではありませんが、個人的にはシナベニアが版木に適していると思います。

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