指導要領の改訂に合わせて、教科書も新しくなります。そして、新しく作り直される毎に教科書は良くなってきています。現行の教科書に取り上げられている題材は子どもが意欲的に楽しく取り組めるものがたくさん掲載されています。このページでは、教科書の利用について考えてみたいと思います。
教科書は宝箱
新年度に初めて図工の教科書を手にする子ども達の様子を見てください。目を輝かせてページをめくっているのではないでしょうか。「これ面白そう」「こんなの作ってみたい」という声があちこちで聞こえてきます。図工の教科書は、楽しいことがいっぱい詰まった宝箱のようなものです。この宝箱を開いた時のわくわく感を実際の授業へつなげていきたいものです。
ところで、教科書を開くとタイトルの下にその題材の概要が記されていて、この題材で何をするのかがすぐわかるようになっています。そして、生き生きと活動する子ども達の様子が示されていて、自分も試したい、やってみたいと意欲を高めるレイアウトです。合わせて、指導要領でうたわれている3つの学力観に応じた学習のめあても示されています。
このように至れり尽くせりの教科書を活用しない手はありません。活用することで授業内容は豊かになりますし、子どもの資質能力も向上することでしょう。
まず教科書題材に取り組もう
当サイトにお越しいただいた方の中には、何か面白そうな題材はないかと考えて訪問頂いた方もいらっしゃるのではないでしょうか。サイトの管理人としてはとても嬉しいことなのですが、Webサイトや題材集などでで題材を探す前に、教科書題材に取り組まれることをお勧めします。
一部の地域、学校では図工作品を展示する校内展覧会が行れるところがあります。そのようなところでは、今年はどのような題材に取り組もうか悩まれるようです。確かに教える側の個性が発揮されるオリジナル題材も悪くはないと思うのですが、オリジナル題材に囚われてしまって教科書題材を活用するチャンスを失っているとしたら残念なことです。
私のところにも、展覧会用の題材を相談に来られる方が時々いらっしゃるのですが、「教科書の中からみつけませんか?」と提案しています。校内展覧会を全学年、教科書題材で企画するというのもとてもいいことだと思います。
教科書を120%活用するために
めあてを確認する
めあてはその題材で身に付けさせようとする資質能力と直結します。ここを意識しておくことで、効果的な学習ができます。反対にここをおろそかにすると、求められる資質能力を育めない授業を展開するということにもつながります。
たとえば、「心にのこったことを絵に表す」題材で、運動会にテーマを絞り取り組むとしましょう。この時のめあては、「その時感じた気持ちに合う形や色を工夫しよう(知識技能)」「心にのこったことをどのようにあらわすか考えよう(思考判断表現力)」「感じたことや思ったことを楽しく表す(学びに向かう力人間力等)」といったところでしょう。こういったことを意識して活動する場合と、単に「運動会の絵をかきましょう」というのでは、子どもの描き方や工夫の仕方といった題材への取り組み方が違ってきます。
また、先生自身の指導にも違いが出てくるのではないでしょうか。めあてを意識すると、「気持ちに合う色を使おうとしているか」とか「描く場面を何にしているか」などに注目するようになりますが、めあてを意識しない場合は、「大きく描くこと」や「ていねいに塗る」ことなどが主な指導のポイントになってきそうな気がします。これは絵を「うまく」描くためには必要かもしれませんが、心にのこったことを表すには必ずしも必要ありません。優勝したことをみんなが喜んでいることを表現するためには、人を小さく描いてたくさんの人を登場させることもあります。
うまい絵を描かそうとすると表現が画一的になりますが、めあてを意識しながら授業すると自然といろいろな表現が出てくるようになります。
学年を超えて教科書を見る
教科書を自分が担当している学年だけではなく、隣接学年、可能なら全学年を縦断的に見てみることをお勧めします。
担当学年以外の教科書をみると、それまでの経験を知ることができるというのはもちろんあります。これも大切な情報ですが、これから行おうとする題材と似た題材が、他学年でどのように扱われているかを知ることで、題材の理解がより深まります。
例えば、低学年の題材に箱に色紙などを貼る題材があります。これは、空き箱を物を入れる収納ボックスに作り変えるもので、使えるものを作る題材です。こういった題材は、他の学年でもあって、プリンカップや牛乳パックなどの空き容器で使うものを作ったり、段ボールを材料にしたり、高学年では粘土を焼いたり、板を使って作ったりします。
これらの題材は、生活をより良くするものを、学年に応じて作る題材ですが、箱を飾るだけの低学年から、形を考えて作る中学年、長く使えるものを作る高学年へとステップアップします。このように他学年での扱いがわかると、自分の担当する学年で行う題材をどのように行えばいいのかはっきりしてきます。先の例で言うと、低学年で材料の形を変えずに、飾りを主に行ってきたのだから、中学年ではプリンカップや牛乳パックなどの組み合わせによって、どのように形を作っていくかを中心に考えていけばよいとかいった具合です。また、長く使えるものを求めている訳ではないので、接合部分などにあまりこだわる必要はないということもわかります。
このように得る情報が格段に増えますので、ぜひ、担当学年以外の教科書をご覧になることをおすすめします。
教師用指導書を活用する
教師用指導書を揃えられている学校も多いと思いますが、こちらもとても役に立つ内容で構成されています。教科書の解説本、用具材料の解説本、実践事例集、鑑賞に使えるアートカードや教室掲示物、ワークシートなど様々なお役立ちグッズが詰め合わされています。中でも私が一番利用したのが、デジタルコンテンツです。デジタル教科書の簡易版のようなデータが入っていて、大型テレビに紙面を表示したり、用具の使い方を動画で見せたりすることができます。
視覚に訴えることのできるこれらのコンテンツは、授業をする上で力強い味方になるはずですが、意外に利用されていなかったりします。もしかしたらDVDという収録形態がネックになっているのかもしれませんが、パソコンのハードディスクにコピーして利用することもできますので、ぜひパソコンと大型テレビが教室にあるのでしたら日々の授業に利用してみてください。
以上、図工の教科書を120%活用しようというテーマで解説してきました。繰り返しになりますが、教科書はとても良くできています。せっかく良いものが身近にあるのですから、ぜひ十二分に活用してみてください。
まとめです
・至れり尽くせりの教科書を活用しない手はない
・オリジナル題材へのこだわりは捨てる
・「めあてを確認する」「他学年の教科書を見る」「教師用指導書を使う」で教科書をフル活用
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