学習指導要領には、第5学年、第6学年の図工で、針金、糸のこぎりなどを扱うことになっています。ここでは、この2つの材料用具を取り上げて、ぜひ知っておきたい指導の重要ポイントを解説しています。
針金
針金というと鉄線をイメージしますが、鉄線は大変固く、小学生がつかう造形材料としてはあまり適しません。そのため、教材カタログや教材キットにある針金はほとんどがアルミ線でしょう。ただ、アルミ線といってもなまし加工をされているものとされていないものでは、硬さがまったく違います。なまし加工とは、通常の針金を加熱、冷却して柔らかく加工した針金のことです。アルミ線は柔らかいイメージがありますが、アルミであってもなまし加工がされていないものは硬くて形を変えにくいので、なまし線を使うようにしましょう。
針金は太いと固く、細いと柔らかくなります。図工で使うなら直径1mmから2mm程度のものがいいでしょう。1mmと2mmでは僅かな違いのように思いますが、実際に触ってみると全く違う素材感です。1mmは糸のような感じの素材で、よじって束にして強度を増してから使ったり、巻き付けて他の針金を固定するために使ったりすると良いでしょう。2mmは多少固めなのでしっかりした形を作るのに適しています。ただ、細かい形を作っていく用途にはちょっと太すぎるかもしれません。そこで、1mm、1.5mm、2mmのように3種類ほど用意しておくと、使い方によって針金を選ぶことができていいでしょう。
針金を扱う場合、ペンチも合わせて指導する必要があります。ペンチは刃の先端でものをつかむことができ、刃の付け根部分には針金を切断するための刃がついています。一般的なペンチの他に先が細長くなって細かい作業に適したラジオペンチがあります。
扱い方に特に難しい点はありませんが、力が弱く柄を最後まで握れずに、針金を切断できない子がいます。そのような場合は、柄をにぎったまま、針金をぐるぐる回すように動かすと切り離すことができます。
切った針金の先は潰れて山型に尖っています。この部分で怪我をする恐れがありますので、先端にはビニルテープを巻くか、ラジオペンチで丸めておきましょう。
針金を扱う際に気をつけることは他にもあります。ひとつは、自分の体の前で扱うことです。加工している部分の反対側が、隣の子の顔の前にあったりするととても危険です。扱っている針金が長い場合は、先端は下を向いているように意識しましょう。自分の足の間に入れるようにしておくといいでしょう。
糸のこぎり
学習指導要領には糸のこぎりとありますが、主として使うのは電動の糸のこぎりです。まずは、電動糸のこぎりの管理について考えておきたいと思います。授業で電動糸のこぎりを使うためには、図工室に十分整備されている必要がありますが、学校によりかなりバラツキがあるようです。また、とても古いものが使われていることもあります。電動糸のこぎりは1台あたりの価格が高い機械ですので、簡単に刷新することはできません。そこで、図工の担当になられた方や図工専科の先生方は、古いものの買い替えも含めて計画的な購入をお願いしたいと思います。
簡単に購入できないので、今ある電動糸のこぎりを良い状態で使っていくことも必要になります。日頃行いたいメンテナンスは、清掃と注油です。おがくずや木切れなどを取り除いて、時々、説明書に従って潤滑油を注すことで、機械の負担を減らすことができます。可能であれば、1年から数年に一度、専門家にメンテナンスを依頼して、劣化部品の交換や調整を行うと快適に使うことができます。
指導にあたっては指導者の方が、電動糸のこぎりは、比較的安全な工具であるということを認識しておいて頂きたいと思います。なぜなら、電動糸のこぎりは、刃が固定されていて刃先が予想外の動きをすることがないので、ケガをすることも少ないのです。
そのため、安全指導のポイントもシンプルです。それは、切っている部分を見ることです。もちろん、これ以外にもいくつか指導することはありますが、このポイントさえ押さえておけば手を切ることはほとんどないでしょう。
ところで、初めて電動糸のこぎりを使う場合、下書きをしないで板を切る題材がお勧めです。下書きをしてその線通りに切ることは、一定の技能が身につかないと難しく、刃を曲げたり折ったりする原因になります。
教科書でも、初めての電動糸のこぎりの題材には、糸のこスイスイや糸のこドライブといった、思いのままに板を切る題材が扱われています。これらの題材で行われている電動糸のこぎりの使い方は、板を動かしているうちに形が切れていくというものです。このとき、切れるようにしか切らないので、無理な力がかからず、刃を曲げたり折ったりがあまり起こりません。このような、下書きをしないで切る題材が、電動糸のこぎりの最初の題材として適していると思います。
5年生6年生で扱う図工の用具を動画で解説
このページの内容を図や動画を使って詳しく解説しています。ここで取り上げられなかった絵の具の扱いも解説していますので、ぜひご覧下さい。
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