これで安心!木版画の刷り方を徹底解説

木版画の刷り解説 基本

 小学校4年生以上で行われることの多い木版画。慣れない彫刻刀で時間をかけて彫っただけあって、刷り上がった時の喜びは大きなものがあります。版画インキの匂いやバレンでこする時の音、木版画ならではの五感を通した経験は子ども達にとっては貴重なものでしょう。このページでは、この刷りの時間を素敵な時間にするために、木版画をきれいに刷るポイントを解説していきたいと思います。

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木版画をきれいに刷る3つのポイント

木版画をきれいに刷るためのポイントは3つです。
1.丁度いいインキの量で刷る
2.端まで気を配る
3.紙の裏表を間違えない

この3つのポイントを押さえることで、失敗なくきれいに刷ることができます。

インキの量

 木版画の刷りで最も大切なのは適切なインキの量です。インキが少な過ぎると、はっきりとした色で刷り上がりません。逆に多すぎると、彫った部分にインキが詰まってしまって、彫り跡がきれいに現れません。使うインキが黒だとしたら、黒い部分はしっかりと黒で、彫った所はハッキリと表現できるのが良い刷りです。

 そのためには、多過ぎず少な過ぎないインキを板に付けて、それをしっかりと力を入れてこすることで、版木から刷り紙にインキを移動させることが必要です。そこでひとつ目のポイント「丁度いいインキの量」するために気を付けることを挙げてみます。

インキを一度に出し過ぎない

 インキが少なければ適量にするために足せばいいのですが、多過ぎると無駄になる上に面倒な作業が増えます。そこで練り板には若干少なめにインキを出してローラーで広げ、少ないようならそこにインキを足すというようにするのがいいでしょう。最初に出す量については、「チューブをほんの少しだけ押しながらチューブの口の太さぐらいの横一文字を書きましょう。」など具体的に指示しておくと分かりやすいでしょう。

 インキが適量かどうかは、ローラーや練り板に現れるインキのスジとローラーを転がした時の音で判断できます。少ないとスジは見えませんが、適量だと細いスジができます。これが、多すぎると太いスジになります。音に関しては、少ないとシャカシャカした高くうるさい音に、適量だとローラーの転がるゴロゴロという音とインキがくっ付く小さな音、多過ぎる場合は音はほとんどしなくなります。

木版画の刷り解説
木版画の刷り解説

 ところで、版木にインキを付けている途中でも、インキが少ないようなら追加します。ちなみに、多過ぎた場合は、ローラーを不要な新聞紙などと練り板の間を往復させてインキを減らしてください。

失敗なくきれいにするためのポイントを動画で解説

 木版画を失敗なくきれいにするためのポイントを動画で解説しています。ローラーを動かしたときの音や練り板の表面の様子などに重点を置いて撮影編集していますので、インキの適量が良くわかります。4分30秒程度の短い動画ですのでぜひご覧ください。

端が薄くなりやすいので端まで気を配る

 ローラーで版木にインキを付ける時も、バレンでこする時も、端はどうしてもおろそかになりやすいものです。そこできれいに刷るためのポイントのふたつ目、「端まで気を配る」です。特にインキを付ける時、ローラーが端までとどいていないことがあります。

木版画の刷り方解説

 ローラーは板の上で上下左右、いろいろな方向に動かします。また、板の上だけで動かしていると、板のインキは増えないので、「練り板から板にインキを運ぶつもり」で、練り版と板の間を行ったり来たりさせましょう。最後にローラーを一方向に動かして、ムラを無くします。

 インキを付け終わったら板を持ち上げて、光にかざしてインキが薄い部分や付いていない部分がないかどうか確認してから刷れば完璧です。

位置合わせのための見当紙

 今回、3つのポイントには入れていませんが、刷り紙と同じ紙を版木の下に敷いて、目印にします。これを見当紙といいます。見当紙は少々汚れても大丈夫なので、使い回しが可能です。

木版画の刷り解説

 この見当紙がなぜ必要なのかというと、版木に刷り紙を重ねようとする時、刷り紙の方が大きいため、どこに紙を置けばいいのか分かりにくいからです。見当紙の真ん中に版木を置いて、見当紙と刷り紙を重ね合わせるようにして紙をのせていけば、自然と真ん中に刷り取ることができるという訳です。

間違えやすい刷り紙の表裏

 木版画の刷りの時間は初めてのことが満載です。いえ例え2回目、3回目であっても子ども達にしてみれば、1年ぶり、2年ぶりの経験でしょう。そんな中、気を付けないといけないことが山のようにあります。紙の表裏を間違えないようにと言われていても、間違えてしまうのは仕方のないことです。

 そこで、あらかじめ紙を配布した時に、紙の裏側に大きく名前を書いておくのがいいと思います。こうすることで、表裏を間違えることはほとんどなくなりますし、名前の書き忘れも防げます。

木版画の刷り解説

 ところで、刷り紙の表裏を間違えてしまうと、紙にインキがきれいに載りません。同じように板にインキを付けていても刷り上がりは全く違ってきます。そのため、きれいに刷るための3つ目のポイントとして、紙の裏表を挙げています。

 バレンは2つ一組で使う

 自分の名前が見えるように紙を板の上に置いたら、バレンでこすります。ひとつを紙を押さえるために、もうひとつをこするために使います。これは、手で押さえて指の跡を版画に付けないためです。バレンをふたつ同時に動かさないように気をつけましょう。

木版画の刷り方解説

 紙をめくる時、ゆっくりとめくって、一度途中までの出来栄えを確認してみましょう。はがし終わっていなければ、紙を戻して、こすり直すことができます。

 刷るための教室レイアウト

 刷るための机や用具の配置についても解説しておきたいと思います。班やグループにローラーや練り板を渡して班単位で活動する場合と、ローラーや練り板を別の場所に用意しておいて個人でインキを付けたり刷ったりする場合の大きく分けて2つの方法が考えられます。

 前者は班で机を寄せて新聞などで覆い、その上に用具を置いて刷っていくことになるでしょう。ひとつの机に練り板やバレンを置いてインキを付ける場所、別の机をバレンでこする場所などと区分けして行うことになると思います。

 後者は、廊下や教室の後ろなどに机を用意しておき、そこに練り板とローラーを置いてインキを付ける場所にします。子ども達はそこに新聞紙に乗せた自分の板を持って行って、インキを付け、自分の机に戻ってバレンでこするというようなやり方です。

木版画の刷り解説

 どちらの方法がおすすめかというとそれは後者です。後者はインキを付ける場所と刷る場所が完全に分かれていますので机や紙を汚す心配が少ないことが一番の理由です。また、自分の机だけでできるので進度の違いがあって彫る子と刷る子が混在しても大丈夫です。後者の欠点は、インキの付いた板を持って教室の中を移動することですが、こちらは動線を整理したり、移動のスペースを広げたりすることで対応できるでしょう。

 刷った紙の保管

 刷った紙は、その都度乾燥棚に入れてもいいですし、一旦新聞紙にはさんで保管してもいいでしょう。インキの量が適当ならば、さんだままでも新聞に貼り付いたまま乾いて取れなくなるということはありません。新聞にはさんだまま置いておいてそのまま持ち帰らせることも可能です。

 版画インキはとても乾きにくいインキです。たとえば、3クラスが1週間の中で刷り学習を行う場合など、毎回ローラーや練り板を洗ってきれいにする必要はありません。全部のクラスが終わってから洗えばいいでしょう。ただし窓際など直射日光の当たるような場所での汚れたままの保管はお勧めしません。長めの日数洗わずに保管する場合、養生シートなどで上から覆い、時々霧吹きで水気を与えてやるといいでしょう。

 ちなみに養生シートは、刷りの時に大活躍します。新聞紙ではどうしてもずれて隙間ができ、それで机を汚してしまい後片付けが大変になりますが、養生シートで完全に覆ってずれないようにテープで留めて置けば、養生シートを外して捨てるだけで後片付けが終わります。とても安価なものですので、版画の時には用意しておくといいでしょう。

 ところで版画インキは水性版画インキを使われることが多いと思いますが、水性とはいえ油分が含まれていて水でサッと落ちるという訳にはいきません。使ったローラーや練り板を洗う際には、台所用洗剤やスポンジたわしがあるときれいにできます。

 以上、木版画の刷り方を解説してきました。この記事がお役に立って、楽しい刷りの時間になれば嬉しいです。

まとめ

・きれいに刷るためには「インキの量」「端」「紙の裏表」の3つのポイントに注意する。
・見当紙で位置合わせをして、バレンは2つをひと組で使う。
・インキを付ける場所を独立させる。
・ 練り板とローラー、数日の内に使うなら毎回洗う必要はない。
・養生シートを用意すると片付けが簡単、インキを洗う時は台所用洗剤を使う。

  

 

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