図工作品展や参観日の展示に潜む落とし穴

作品展の落とし穴 記事

 図工の時間に制作した絵や工作を学校内で展示する作品展は、子ども同士がお互いの作品を鑑賞し合ったり、保護者の方に学習の様子を知ってもらったりできる貴重な機会です。しかし、有意義であるはずの作品展も、気づかないうちに弊害を生じていることがあります。そこで、このページではこの作品展を有意義なものにするために、作品展に臨む際に陥りがちな問題点について解説します。

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 作品展の弊害

 作品展に関して私が一番気になることは、普段の授業の作品と作品展での作品には大きな違いがあるということです。両者に題材や材料費、指導時間などが変わってくるのは当然かもしれませんが、気になっているのはそこではなく、作品から感じられる子ども達の活動の様子です。

 普段の授業の作品は、子どもらしい楽しいものがたくさんあって活動を楽しんだことが感じられるのに対し、作品展の作品には、子どもたちがのびのびと活動した様子があまり感じられなかったりすることがあります。もちろん作品展の作品が全てそうだというのではありませんが、そういうことを感じられたことがあるのは、私だけではないと思います。

 では、なぜ、このようなことが起こるのでしょうか。それは、保護者の方が本当にそう望んでいるかは別として、先生方が保護者の評価が高いと思われる、完成度の高い作品や見栄えの良い作品を目指しがちだからです。また、一部の子どもの作品の出来が悪くなるのを避けて、子どもの間で差の出にくい題材を求められたりもします。

 その結果、作品展の題材やそれを制作する過程では、出来をコントロールしやすいものになりがちです。具体的には、描くものを決めて、描き方を教えて、敷かれたレールの上を進んでいくような作品づくりが行われます。

 こういった作品の見栄えにこだわる授業では、子ども達の自由な表現や発想は生まれません。つまり、保護者の方の期待に応えようとして、教科の目標がないがしろになっていることになります。図工の目標が達成できない作品を展示することの意味は、いったいどこにあるのでしょうか。

作品展の落とし穴

弊害を避けるには

 それでは、保護者の方の期待に応えようとすることで起こるこの弊害を避けるにはどうすればいいのでしょうか。私は、保護者の方に図工という教科をよく知って頂く努力をすることが重要だと思っています。なぜなら、図工が感性を育み自分なりの表現を重視している教科だと認識している保護者の方には、子どもらしい作品の価値をわかって頂けるはずだからです。

 そこで、保護者の方とのコミュニケーションを通じて、教科に対する正しい理解をしていただけるように働きかけていく必要があると思います。例えば、参観日などで子ども達の活動の様子を見て頂いたり、懇談会などで図工を通じて育てる資質能力について知ってもらう機会を設けたりはどうでしょう。学校、学年通信を利用したり、作品展の会場で配るプリントを用意したりして、どのような意図で活動に取り組んでいるのかを解説するのもいいでしょう。また、展示されている作品は、学習活動の結果です。その過程を知ってもらうこともとても意義がありますので、子ども達の活動がわかるもの、たとえば授業の様子を撮影した動画や写真を会場で見ることができるようにするのもいいと思います。

 こうした取り組みを通じて教師と保護者の方の図工に対する考え方が一致することで、図工の目標を達成しようとすることが、保護者の方の期待に応えることになりますこれは、普段の図工の延長で作品展を行えばいいということに他なりません。作品展や参観日の展示用に特別の題材を考えたり、見栄えや完成度を求めて時間を使ったりする必要がなくなります。

 保護者の方に図工は子どもの感性を育む教科ですと言っておきながら、画一的な作品を作るわけにはいきませんので、教師の指導力も向上してくことになります。

 このように保護者の方と図工のあるべき姿を共有しながら、子どもの感性が発揮されるような作品を展示することで有意義な展示になっていくとのではないでしょうか。

作品展の落とし穴を動画で解説

このページの内容を動画で解説しています。こちらも合わせてご覧下さい。

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